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2022年 6月 18日 Open your eyes~青木先生~

 タランベールのグラスという話を知っていますか.18世紀の数学者が残したお話です.このような内容です.タランベールが持っているグラスに水を注ぐと死んだ家族と一度だけ再会できる.ワインを注ぐと死んだ友人と一度だけ再会できる.そのような不思議なグラスがあります.男はちょうど妻,ナターシャを亡くしたばかりで,名前をノーマンといいます.彼は妻に一度会いたいと思いました.ナターシャはノーマンと幼馴染で,結婚前から友達でした.ナターシャは彼の友達であり,家族でもあったのです.ノーマンはタランベールに聞きました.「私は水を入れるべきか,ワインを入れるべきか,どちらでしょうか」タランベールは答えました.「水を入れなさい.ワインを入れてはいけません.私はあなたが結婚前のナターシャをどれほど大切にしたか知っています.結婚前あなたはナターシャの気を引こうと必死に彼女に尽くしました.一方,結婚後にあなたは彼女に何か親切なことをしましたか.彼女は常にあなたのことを思っていましたが,あなたはどうでしたか.一度でも彼女の笑顔を見ましたか.結婚の誓いを忘れたのですか.一度だけチャンスを上げます.水を入れて思い出しなさい.どちらのナターシャが,あなたが愛したナターシャでしたか.」グラスに水を入れたノーマンは気が付きました.彼が欲しかったのはナターシャとの幸せではなく,ただナターシャと結婚することだけでした.この話はトルコで結婚前の夫に彼の母親が必ず花婿に聞かせる伝統があり,結婚後も妻のことを必ず大切にしなさいという寓話です.

 これを鵜吞みにした人,残念ながらこの話は私がポテトチップスを食べながら作った全くのでたらめです.それっぽい言葉を並べてあたかも真実かのように見せかけることは簡単です.特に具体的な単語,タランベール,18世紀などの実在する単語を組み合わせれば信ぴょう性を増やすことができます.何か新しいことを知る時,このブログのような誰で書ける記事を当てにしてはいけません.では,どのように正しいことを学べばよいのでしょうか.その答えは,正しいことなどないと常に疑うことです.学校で教わることはほとんどが正しいとされていることですが,過去には歴史の教科書が書き換わったことがあります.常に自分が知っていることが正しいか疑うことを止めてはいけません.これは「方法論的懐疑」と言います.モンテーニュの言葉です.自分の頭とペンを使って疑ってみましょう.

慶應義塾大学理工学部一年青木陽