東工大女子枠導入についての小考~青木先生~ | 東進ハイスクール 武蔵小杉校 大学受験の予備校・塾|神奈川県

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2022年 11月 17日 東工大女子枠導入についての小考~青木先生~

私は今回の東工大の決定に対して私は賛成の立場から意見を述べる.以下に女子枠導入をする背景と,それによって予想されることを述べた後に,今回の議論について,今後の展開を述べる.

Ⅰ.なぜ理工系学部へ進出する女性が少ないのか

 なぜ東工大は新たに女子枠を設ける必要があったのだろうか.東工大が目指すことは,究極的には「社会全体に、真に多様性を需要する環境が育つ」[1]ことだ.東工大が掲げた目標の裏を返せば,今の東工大の学修環境はどちらかといえば同質的で,社会には輩出する科学者・技術者は男性ばかりであったのだ.東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の横山広美教授は,数学・物理に対する男性的イメージに加えて,日本では,女性が知的であることに否定的な認識が関連すると指摘する[2].さらに彼女は,それら二つのバイアスには相関が見られるというのだ.また,それらの誤った認識が正に誤謬であることは国際的に実施された数学と理科の試験がそれを示していて,また,男性が誤った女性に対する認識を今日でなお持っていることは,分野は異なるものの,例えば,前オリンピック委員会会長の発言[3]など,記憶に新しい.要約すると,現在の日本社会に根差した女性への根拠のない偏見は社会一般に表れているのだ.

[1] https://www.titech.ac.jp/news/2022/065237

[2] https://www.jst.go.jp/ristex/stipolicy/policy-door/article-08.html

[3] https://www.bbc.com/japanese/56022282

Ⅱ.女子枠導入はブレイクスルーとなりうるか

 では,女子枠導入は女性が理数系へ進学することの,選抜時のみならず将来的な志願者への後押しとなるのだろうか.私の予見では,十分に可能だと考える.溝口・溝上の論文[1]によれば,「自分とはあまりにも遠い存在をモデルとすることは効果的ではない」と述べている.対偶を取ると,効果的なロールモデルは自分に十分近しいものであるということだ.このように考えると,社会において,理系分野で活躍する人と性別を共有することは,一つの心理的距離の接近であり,効果的なロールモデルの必要条件になりうるのではないか.言い換えれば,女性の潜在的な理数系への進学をあきらめることを防ぐ一つの防波堤になると思われる.

[1] https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsyap/32/1/32_17/_pdf/-char/ja

Ⅲ.今回の議論で検討が必要な点について

 今回の議論ではある程度の東工大の施策についての根拠を伴った私見を述べたが,いくつかの検討が必要と思われる.第一に,旧来の男性中心主義的な学問に対する偏見はロールモデルによって修正することができるだろうか.溝口・溝上の論文ではロールモデルに対して「参考にしたり助言をもらったりして何か気づきを得ようとする態度」が効果的なキャリア成熟に関して重要であると述べている.マッチョな男性に対してロールモデルは十分な役割を果たすことができるだろうか.第二に,東工大は女子枠導入のほかに方策がなかったのだろうか.今回の決定は男性に対しての不公平感や,女性に対して,男性が「恵みを与える」という構図としての認識を引き起こしやすい.例えば,女子志願者向けのワークショップを行うなど,東工大は男女平等に関して力を入れている大学[1]である.他にもこのようなイベントを行うことで得られた効果はわからないが,入試制度の変更は良くも悪くも,社会へ与える影響が大きいように思われる.いずれにせよ,このような劇薬を服用しないと効果が望めない日本社会に問題があるのは明らかである.問題が社会にあることは安宅和人が著書[2]で行っているように,Ivy league と東大の比較で明らかだ.60年代まで女子禁制だった前者は今では入学者はほぼ男女同数である傍ら,戦後に女性にも門戸を開いた後者は4分の1にも達していない[3].とはいえ,東工大のこの方法については検討の余地があり,これからの議論に期待したい.

[1] https://www.gec.jim.titech.ac.jp/promotion/jkevent.html

[2] シン・ニホン,ニューズピックス社,2020年,pp.83-86

[3] https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20211021gg.html


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