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2024年 3月 26日 B3での抱負~青木先生~

こんにちは.久しぶりのブログを書く青木です.今回は,来年度から学部3年生となるのに合わせて,春学期中に読みたい本を紹介します.今の自分には知識が無さ過ぎるので,様々な本を読んでいます.これらの本を継続して読むことで,学部の卒業研究,さらには,将来の研究の基盤を固めるためです.今回は3冊,今学期中に読みたい本を高校生でも分かるように紹介します.

砂川重信,理論電磁気学,紀伊國屋書店

この本は学部3年生以上向けの電磁気学の本です.まずは電磁気学の基礎法則であるMaxwellの方程式を種々の実験事実から導いたあと,空間の座標変換や時間反転,ゲージ変換と呼ばれる変数変換に対してMaxwell方程式が成立することを確かめます.次に,まずは電場や磁場が時間変化しない(一定である)状態での性質を導きます.さらに,時間変化することによって生じる,光に代表される電磁場の性質を調べます.最後には,相対論的な効果を考慮に入れた電磁気学まで到達して,この本は終わります.僕はまだ,静電場の電磁気学までしか読めていません.春学期が終わるまでに時間変化する電磁場の章にたどり着きたいです.

清水明,量子論の基礎,サイエンス社

この本は文科系の学生をも含む,量子力学の根底をなす,量子論の本です.まずは古典論の枠組みでは破綻した物理現象を書き直すための理論的要請を紹介したあと,交換関係や射影演算子などを準備します.次に,解析力学をある条件で書き換えると量子論が導かれることを示します.このようにして準備したSchrödinger方程式を様々な条件のもと(例えば,無限/有限の深さの井戸型ポテンシァル問題,1次元自由粒子の問題など)で解き,波動関数を求めます.さらに,時間発展する状態での波動関数の決定法を学んだあと,場を量子化することを検討します.僕は時間発展する系での量子論はまだ理解していないです.残りの分量は大して多くはないので,春学期中に読み終わりたいです.量子力学の詳しい内容を知りたい方は,僕の過去のブログを参照してください.

須藤靖,解析力学・量子論,東大出版会

この本は解析力学の本です.解析力学は力学を一般化したもので,Newton方程式という,極めて非直観的な理論体系ではなく,ある点から別の点へと移動する経路は,ざっくばらん言えば,最も簡単な方法となる,という最小作用の原理から出発してエネルギー保存則や運動量保存則,角運動量保存則が成立することを確かめ,Newton力学を包含する一般的な理論であることを述べます.さらに,天体の運動や量子論への接続を紹介してこの本は終わります.目標は春学期中に量子論に入ることです.

他に,以下の本を読みたいです.名前だけ紹介します.

  • 松坂和夫,集合・位相入門,岩波書店
  • 田崎晴明,統計力学I,培風館
  • 雪江明彦,代数学1,日本評論社
  • 矢口裕之,初歩から学ぶ固体物理学,講談社
  • Sakurai, J.J. & Napolitano, Jim,Modern Quantum Mechanics,Cambridge University Press
  • 清水明,熱力学の基礎I,東京大学出版会
  • 齋藤正彦,線型代数入門,東京大学出版会
  • Kittel, Charles,Introduction to solid state physics,Wiley Publushing
  • 須之内治男,関数解析入門,サイエンス社
  • 伊藤清三,ルベーグ積分入門,裳華房
  • 藤岡敦,手を動かして学ぶ集合と位相,裳華房

物理の自然の全てを記述する大胆で熱く,野蛮な試みが氷のような精緻さを持つ数学的構造の上に見事に乗っていることに感動して,もっと詳しく勉強して,どちらかに偏ることなく,数学を使って理論を構築する静的な動きと,物理的な実験結果に柔軟に対応する動的な動きの両方を身に着けた人間になることが,僕の究極的な目標です.高校生の皆さんも数学と物理を楽しみましょう!

慶應義塾大学理工学部物理情報工学科 新3年青木 陽

★明日の開館時間★

8:30~21:45